今日の臨床栄養学実習


 臨床栄養学実習における調理実習は他の調理実習とは少し違います。献立(使用する食材とその量)は提示されますが、作り方は自分たちで考えます。したがって、1食の摂取エネルギーと栄養素量はほぼ一緒であるにもかかわらず、班によって味・見た目が違う食事が出来上がります。
 

<臨床栄養学実習の目的>
1. 食べる人(患者)のことを想いながら(考えながら)調理する。
2. 献立通りの成分が器に盛られ、提供されるように考えながら調理する。
料理をする時に一番大事な事は「食べてもらう人のことを想う=愛」ですね。今日の臨床栄養学実習は下記の人のために、下記の人のことを想いながら(考えながら)料理してもらいました。
 

<今日の患者さんその1(想像上の人物です)>

55歳・男性、身長:170 cm、体重:75 kg、BMI:25.9(浮腫あり) 主病名:慢性腎不全
5年前から高血圧を指摘されていたが放置。さらに1年前に心電図異常を指摘されたが放置。10ヶ月前に下肢の浮腫を指摘されたが放置。2週間前に浮腫増強し、呼吸苦がひどくなったため循環器科を受診。尿蛋白および尿潜血を認め、慢性腎不全、急性心不全のため入院となった。
Alb: 3.6 g/dl、BUN: 45 mg/dl、Cr: 1.70 mg/dl、eGFR: 35 ml/min(CKDステージ3b)
<入院前食事について>
5年間何度か食事について指摘されてきたが、ずっと放置してきた。朝、夕は妻が作った食事を食べている。妻には自分の身体の事は一切知らせていない。昼は主に外食。

 

<今日の実習献立>

食種:慢性腎臓病食1900 kcalの昼食
・ごはん/野菜はさみとんかつ
里芋の柚子味噌かけ/菜の花のわさび和え/みかん
・エネルギー: 703 kcal ・タンパク質:1 9.3 g
・脂質:    15.4 g  ・食塩相当量: 1.4 g

 

<今日の実習で学んだ事・感想を紹介>

● 主菜を大きく見せるために、野菜をとんかつの中に全て入れようと思ったのですが、全て入りきらず、断念した。でもギリギリまで野菜を入れ、ボリウムがよく見えてよかったと思います。今までで一番良かったと思います。
● 食べやすいように、一口サイズに切り、肉で野菜を巻き、量を増やした。可愛さを出すために串に刺した(写真参照)。しかしもう少しボリウムがあった方がよかった。
● 純粋なとんかつが良かったので、薄切りのロース肉を2枚重ねた。
● 野菜を茹でてカリウムを減らし、巻きやすさもUPした。
● キャベツ、なす、赤ピーマンを全て肉に挟もうと思ったが、無理だった。本当は4班のようにしたかった。
● 前回の脂質異常症食の時のはさみチキンかつよりも、油が多く使用できたので作りやすかった。増やしてくれてありがとう。
● ワサビが効いていて、今日みたいに暑い夏日にはぴったりの一品だなと思った。菜の花をしっかり茹でてカリウムを減らすよう心掛けました。
● カリウムを減らすために、野菜を全て茹でてから調理しました。
● カリウムを減らすために、果物は生ではなく缶詰を使用する対応法を知った。
● どのように調理するとボリウムが出せるのかを考えるのが難しかった。
● PLCご飯は味がしない。プラスチックみたい。
● PLCご飯はいつものご飯と違って少し硬くて、クセになる美味しさでした。
● PLCご飯は美味しくなかった。
● PLCご飯は意外とおいしく食べられた。
● PLCご飯はごはんの香りがなく、米感がなかった。
● PLCご飯は食べられなくはないが、食べたいとも思わない。
● PLCご飯は、変な甘さが気になる。
● 低たんぱくご飯は無機質な感じだった。
● おかずは少ないけれど、しっかりご飯を食べてほしいと思った。
● ご飯の量に対して、おかずの量が少なくて、食べるのが大変だと感じた。
● 野菜や果物を食べてはいけない、肉や魚は少しだけ、ではなく、調理法でおいしい食事をとることが出来ることを指導したいと思った。

<臨床栄養学実習全体を通しての感想>

● 実際に患者さんが食べる食事を作って、食べてみることで、患者さんの気持ちが少しわかった気がしました。健康第一だと思いました。
● レシピを見ながら作るのではなく、自分たちで料理の作り方、見せ方を考えながら作るのはとても楽しい実習だった。
● 色々な病態の食事があって、この人にはどのように食べてもらうのが一番良いのかを、考えることが出来るようになったと思う。
● 症例の患者さんを考えて、炭水化物、たんぱく質、脂質の割合を変えるのが大変だった。
● 実際に作ってみると、材料は同じでも調理の仕方で料理の見た目が変わることに驚いた。
● 完成図を想像して実習したため、スムーズに早く終えることが出来た。
● 自分たちで調理法、盛り付け方を考えるのが楽しかった。
● 今後、料理をする時、食べてもらう相手を考えて、見た目もこだわり頑張りたい。
● 実習を始めたころよりも色々患者さんのことを考えて調理することが出来るようになったと思います。
● 楽しく調理をし、愛情を込めて作ることが大切だと感じました。
● 食材を無駄にしないことが大切だと思いました。

 
今日は、常食から最もバランスが逸脱している病態の食事「慢性腎臓病食」を実習しました。
腎機能低下を阻止するために低タンパク質に。そしてこれを代償するために高エネルギーに。食事にすると少しのおかずでたくさんご飯を食べないといけないことを、知ることが出来た実習だったと思います。さらに低タンパク質ご飯を使用すると、おかずは普通量を食べられるが、このご飯の味と値段を知り、学生はいろいろと考えていました。健康長寿のために、疾病リスク低減のための食習慣を身に着けることがいかに大切な事か、改めて知ることが出来たと思います。