MENU
  • 資料請求
  • オープンキャンパス

お知らせ

古典,目からうろこの素晴らしい世界。

 本センター講師である金澤武男先生(古典文学研究家)もメッセージを送ってくださいました。
 香山雪彦先生(福島県立医科大学名誉教授・桜ヶ丘病院精神科医師)が私たちに提案してくださった「ネガティブ・ケイパビリティ」について、源氏物語では具体的にどのように描かれていたのかについてご紹介されております。

※香山先生のメッセージは5月7日のお知らせをご覧ください。

 


 

古典,目からうろこの素晴らしい世界。

桜の聖母生涯学習センター講師
金澤 武男

 
 今回の新型コロナウィルス禍は,1918年から1920年に流行したスペインかぜ以来の強敵で,多くの方にとって不安と恐怖に満ちた初めての体験であろうと思います。スペイン風邪は,全世界で患者数約6億人。2,000万から4,000万人が死亡したとされています。我が国においても,2,300万人の患者数,38万人の死者を出したと記録されています(東京都健康安全研究センター)。今回の新型コロナウィルスも,人類にとってはそれに匹敵する強敵であるかも知れません。しかし100年前とは違い,医学も飛躍的に発達し,情報伝達手段も目を見張る進歩を遂げ,私たちを守ってくれています。世界が理解し合い,手を取り合って立ち向かっていけば必ず克服できると信じております。負けてなるものか。
 香山雪彦先生の記事を拝読させていただきました。「今、ネガティブ・ケイパビリティを」という提言でした。「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」。それが今求められる,と言うことでした。感銘しました。今,私たちは未知との闘いのまっただ中にいます。未知は不安で怖いのです。その闘いは心の問題です。100年前と違い医学は飛躍的に進歩し,情報伝達手段も目を見張る進歩を遂げたと書きましたが,私たちの心はそれと同じようなスピードで深化しているわけではありません。むしろ医学の進歩は病に対する侮りを招き,情報の進化は,フェイクの蔓延で不安や恐れをあおる方向に導いているかも知れません。科学技術の進歩は,どんな答えもすぐに出る,対処しようのない事態などはないという観念を我々に植え付けたように思います。とすれば「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」は,あるいは反比例的に退化しているかも知れません。私たちは,もう一度その事を考えるチャンスが与えられたようです。
 さて「源氏物語」のヒロインは紫の上です。零落寸前の運命でしたが光源氏の目にとまり終生の伴侶として迎えられ,源氏と生涯を共にした女性です。彼女にも「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態」があり,生涯にわたって「耐え」続けました。耐え続けることができたという強靱な精神力に,今,思いを至します。紫の上の言葉です。「女ほど身の処し方の難しいものはない。男の誘いに引きずられ,愛情の世界に生きようとすれば,結局は不幸になるだけだ。しかし,だからといってそうした愛情を拒否してどこに女の生きることのできる道があるというのか」「わが心ながら,どうしたら,ほどほどに身を保つことができようか」(源氏物語・第39帖「夕霧」)。男性の「すさびごと」にさらされる女性にとって愛の世界に幸せはない。女は男にとって愛情の対象ではない。「すさびごと」の相手でしかない。男に応じれば,女は結局は不幸になるだけだ。しかしだからといって女性に他の生き方があるのだろうか。残念ながらそれはない。どうすればいいのか。紫の上は悩み探しますが答えは見つかりません。源氏物語の後半,「宇治十帖」にはその問いに対する答えが描かれます。女が,真に女性として生きる道は? しかし, 宇治十帖でもその答えは見つかりませんでした。「すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える」ことは難しいのです。難しいのですがそれができるのが人間であると信じています。
 「温故知新」(論語)。この機会に古典を読んでみましょう。目からうろこの素晴らしい世界があなたを待っていますよ。

©Sakura no Seibo Junior College. All Rights Reserved.